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      • Blu-ray&DVD 5月10日発売
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      • 土を喰らう十二ヵ月の台所
      • 主題歌

      解説

      四季の恵みに感謝し、
      十二ヵ月を生きる。

      一年半をかけて撮影した沢田研二の待望の主演作

      1960年代にデビューして以来、ミュージシャンとしても俳優としても、唯一無二のオーラを放ち続けている沢田研二。昨年は代役で主演した『キネマの神様』で話題を呼んだが、実はその以前から、一年半がかりの映画の撮影に取り組んでいた。それが『土を喰らう十二ヵ月』である。

      北アルプスを望む信州を舞台に、犬一匹と山荘で暮らす作家の一年間を季節の移り変わりと共に追った本作は、沢田研二の今の魅力を封じ込めた待望の主演作である。

      水上勉の料理エッセイを中江裕司監督が脚本化

      原案は、『飢餓海峡』などのベストセラーで知られる水上勉が、1978年に雑誌ミセスに連載した料理エッセイ。少年時代に京都の禅寺で精進料理を学んだ水上は、自ら収穫した野菜や山菜を駆使して料理を作り、それを食す歓びや料理にまつわる思い出を味わい深い文章に仕立てあげた。その世界観を元に、『ナビィの恋』の中江裕司監督が脚本を執筆。

      自然を慈しみ、人と触れ合い、おいしいご飯を作り、誰かと食べられることに感謝する日々を送る男の姿を通して、丁寧な生き方とはどういうものか、真の豊かさとは何かを問いかける。

      料理研究家・土井善晴が映画に初挑戦

      白胡麻はすり鉢で皮をむいて、胡麻豆腐にする。筍を炊いて木の芽をたっぷり盛って仕上げる。原案エッセイの中に登場する豪快にして繊細な料理を、目にも耳にもおいしく再現したのは、家庭料理の第一人者として知られる料理研究家の土井善晴。本作で初めて映画の料理を手がけた土井は、食材選びや扱い方、手さばきの指導や器選びに至るまで、深く作品に携わった。

      松たか子ほか、実力派の豪華俳優陣が結集

      毎日の家事をひとつひとつ丁寧にこなす性格でありながら、13年前に亡くなった妻の遺骨の処遇を今も決められないでいる主人公のツトムを、独特の色気を漂わせて演じる沢田研二。

      彼を支える共演陣にも豪華な顔ぶれが揃った。ツトムの山荘を時折訪ねてくる担当編集者で、年の離れた恋人でもある真知子に、『ラストレター』の松たか子。ツトムの手料理を、口いっぱいに頬張る食べっぷりが愛らしい。さらに、ツトムの義母に奈良岡朋子、山歩きの師匠の大工に火野正平、恩人の住職の娘に檀ふみと、味のあるベテランが脇を固めている。そして、地元長野の人々が中江監督のワークショップを経て多数出演している。

      スクリーンで、主人公と十二ヵ月を体感する

      タイトルの「土を喰らう」とは、旬を喰らうこと。四季の移ろいの中で、自然が恵んでくれる食物をありがたく頂くことだ。その食に向き合う精神は、今この瞬間を大切に生きることを意味している。楽しくも厳しい里山の暮らしから、そんな人生の極意を学んでいくツトムの物語は、日々の生活に追われ、旬を感じることが難しくなってしまった私たちに、人としての豊かな生き方を体感させてくれる。

      物語

      立春

      作家のツトム(沢田研二)は、人里離れた信州の山荘で、犬のさんしょと13年前に亡くなった妻の八重子の遺骨と共に暮らしている。口減らしのため禅寺に奉公に出され、9歳から精進料理を身に着けた彼にとって、畑で育てた野菜や山で収穫する山菜などを使って作る料理は日々の楽しみのひとつだ。とりわけ、担当編集者で恋人の真知子(松たか子)が東京から訪ねてくるときは、楽しさが一段と増す。皮を少し残して囲炉裏であぶった子芋を、「あちち」と頬張る真知子。「おいしい。皮のところがいいわ」と喜ぶ姿に、ツトムは嬉しそうだ。

      立夏

      山荘から少し離れたところに、八重子の母チエ(奈良岡朋子)が畑を耕しながらひとりで暮らしている。時折様子を見に来るツトムを、チエは山盛りの白飯、たくあんと味噌汁でもてなした。八重子の墓をまだ作っていないことを、今日もチエにたしなめられた。帰りには自家製の味噌を樽ごとと、八重子の月命日に供えるぼた餅を持たされた。

      小暑

      塩漬けした梅を天日干しにする季節、ツトムの山荘に文子(檀ふみ)が訪ねてくる。彼女は、ツトムが世話になった禅寺の住職の娘。住職に習った梅酢ジュースを飲みながらの昔話。文子は、亡き母が60年前に住職と一緒に漬けた梅干しを持参していた。「母は、もしツトムさんに会うたらお裾分けしてあげなさい、と言うて死にました」と文子。夜、ひとりになったツトムは、作った人が亡くなった後も生き続けている梅干しの味に泣いた。

      処暑

      チエが亡くなった。義弟夫婦(尾美としのり、西田尚美)に頼まれて山荘で葬式を出すことになったツトムは、大工(火野正平)に棺桶と祭壇を頼み、写真屋(瀧川鯉八)に遺影を頼みと、通夜の支度に大忙しだ。東京から真知子もやって来て、通夜振る舞いの支度を手伝うことに。
      夜、思いがけなくたくさん集まった弔問客は、チエに作り方を習ったそれぞれの味噌を祭壇に供えた。

      葬儀のあと、真知子を栗の渋皮煮でねぎらったツトムは、「ここに住まないか」と持ち掛ける。「ちょっと考えさせて」と応じた真知子だが、しばらくして、ふたりの心境に変化を生じさせる出来事が起こる――。

      キャスト

      沢田 研二

      ミュージシャン、俳優。1948年6月25日生まれ。鳥取県生まれ、京都市育ち。
      1960年代後半のグループ・サウンズ全盛期より、ザ・タイガース、PYG、ソロ活動でミュージシャンとして永きにわたって活躍。レコード大賞をはじめ、数えきれないほどの賞を受賞。
      俳優としてTVドラマ、映画、舞台、CMにも数多く出演。映画では79年『太陽を盗んだ男』(長谷川和彦監督)、81年『魔界転生』(深作欣二監督)、84年『ときめきに死す』(森田芳光監督)、91年『ヒルコ/妖怪ハンター』(塚本晋也監督)、『夢二』(鈴木清順監督)、2002年『カタクリ家の幸福』(三池崇史監督)などの映画で主演。
      急逝した志村けんの代役として、21年公開の『キネマの神様』(山田洋次監督)で主演を務めた。
      ミュージシャンとして、毎年ライブツアーを開催。2021年はソロ活動50周年記念LIVE「BALLADE」を、2022年初めには「初詣ライブ」を開催。6/25には2年ぶりのシングルCD「LUCKY / 一生懸命」をリリース。7月からは2022-2023LIVE「まだまだ一生懸命」を開催。

      松 たか子

      俳優。1977年6月10日、東京都生まれ。
      93年に歌舞伎座「人情噺文七元結」で初舞台を踏む。94年に大河ドラマ「花の乱」(NHK)でTVドラマに初出演。97年に『東京日和』(竹中直人監督)で映画デビュー。同年「明日、春がきたら」で歌手デビュー。98年には『四月物語』(岩井俊二監督)で映画初主演を飾る。
      2009年には『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』(根岸吉太郎監督)で第33回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。14年ディズニー映画『アナと雪の女王』、19年『アナと雪の女王2』の日本語吹き替え版・エルサ役と劇中歌を担当。主な映画出演作品に、10年『告白』(中島哲也監督)、12年『夢売るふたり』(西川美和監督)、14年『小さいおうち』(山田洋次監督)、18年『泣き虫しょったんの奇跡』(豊田利晃監督)、18年『来る』(中島哲也監督)、19年『マスカレード・ホテル』(鈴木雅之監督)、20年『ラストレター』(岩井俊二監督)。21年にはTVドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(関西テレビ)や舞台「パ・ラパパンパン」(松尾スズキ演出)が好評を博した。22年はNODA・MAP「Q: A Night At The Kabuki」(野田秀樹作・演出)、『峠 最後のサムライ』(小泉堯史監督)などがある。

      西田 尚美

      女優。1970年2月16日、広島県生まれ。
      モデルを経て女優に。97年『ひみつの花園』(矢口史靖監督)で映画初主演。99年には本作の中江裕司監督の『ナビィの恋』で主演。近年の主な映画出演作に2018年『友罪』(瀬々敬久監督)、『生きてるだけで、愛。』(関根光才監督)、19年『新聞記者』(藤井道人監督)、『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』(小林聖太郎監督)、『凪待ち』(白石和彌監督)、21年『青葉家のテーブル』(松本壮史監督)、『あの頃。』(今泉力哉監督)、『護られなかった者たちへ』(瀬々敬久監督)、22年『カラダ探し』(羽住英一郎監督)、『貞子DX』(木村ひさし監督)。TVドラマは20年「半沢直樹」(TBSテレビ)、21年「にじいろカルテ」(テレビ朝日)、「うきわー友達以上、不倫未満―」(テレビ東京)、「ソロモンの偽証」(WOWOW)、連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(NHK)、22年「恋せぬふたり」(NHK)、「17歳の帝国」(NHK)、「俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?」(テレビ朝日)など。また、舞台では今年は「鎌塚氏、羽を伸ばす」(倉持裕演出)、「夏の砂の上」(栗山民也演出)がある。

      尾美 としのり

      俳優。1965年12月7日、東京都生まれ。 78年『火の鳥』(市川崑監督)で映画デビュー。
      80年『翔んだカップル』(相米慎二監督)、82年『転校生』、83年『時をかける少女』(大林宣彦監督)で活躍を始め、83年『転校生』で第6回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後、映画、テレビを中心に数多くの作品に出演し、名バイプレイヤーとして長年にわたり活躍。近年のドラマ出演作品は21年「半径5メートル」(NHK)、「桜の塔」(テレビ朝日)、22年「嫌われ監察官音無一六」(テレビ東京)、9月「HOTEL-NEXT DOOR-」(WOWOW)、10月「つまらない住宅地のすべての家」(NHK)がOA予定。今年は映画『ウェディング・ハイ』(大九明子監督)、『とんび』(瀬々敬久監督)公開のほか、『マイ・ブロークン・マリコ』(タナダユキ監督)、『宮松と山下』(関友太郎・平瀬謙太朗・佐藤雅彦監督)の公開が控えている。

      瀧川 鯉八

      落語家。真打。1981年3月27日、鹿児島県生まれ。
      2006年、瀧川鯉昇に入門。前座名は「鯉八」。10年8月に二ツ目に昇進。15年、17年、18年に渋谷らくご大賞を受賞。20年3月、花形演芸大賞銀賞を受賞。20年5月に真打に昇進。真打昇進披露興行が好評を博し、21年の新宿末廣亭・正月興行下席では真打昇進後、最速の主任(トリ)を務めた。21年、22年連続で、花形演芸大賞金賞を受賞。演目は新作のみ。「俺ほめ」「おはぎちゃん」「長崎」「ぷかぷか」など唯一無二の世界観を寄席に作り上げる異色の落語家。創作話芸ユニット「ソーゾーシー」のメンバーとしても活躍。今年の新宿末廣亭の正月興行下席でも、二年連続の主任を務めた。

      檀 ふみ

      俳優。東京都生まれ。
      72年『昭和残俠伝 破れ傘』(佐伯清監督)で映画デビュー。主な出演映画には、76年『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』(山田洋次監督)、93年『わが愛の譜・滝廉太郎物語』(澤井信一郎監督)、2000年『雨あがる』(小泉堯史監督)、08年『山桜』(篠原哲雄監督)、14年『春を背負って』(木村大作監督)、19年『轢き逃げ 最高の最悪な日』(水谷豊監督)、22年『太陽とボレロ』(水谷豊監督)など。 「N響アワー」(NHK)や「新日曜美術館」(NHK)の司会、「日めくり万葉集」(NHK)の語りなど多方面で活躍している。エッセイも好評で、著書は多く、共著『ああ言えばこう食う』(集英社)は第15回講談社エッセイ賞を受賞。

      火野 正平

      俳優。1949年5月30日、東京都生まれ。
      1973年、大河ドラマ「国盗り物語」(NHK)で注目を集め、74年『俺の血は他人の血』(舛田利雄監督)に主演し映画デビュー。その後、テレビ、映画に数多く出演。近年は14年『そこのみにて光輝く』(呉美保監督)、18年『空海-KUKAI 美しき王妃の謎』(チェン・カイコー監督)、20年『Fukushima50』(若松節朗監督)、『罪の声』(土井裕泰監督)など。21年、『罪の声』で第30回日本映画批評家大賞のゴールデン・グローリー賞を受賞。また、2011年から今も続く「にっぽん縦断 こころ旅」(NHK BSプレミアム、BS4K)の自転車旅も大好評。

      奈良岡 朋子

      俳優。1929年12月1日、東京都生まれ。
      48年に民衆芸術劇場(第一次民藝)の研究生となり、50年劇団民藝の設立に参加。主な出演舞台は、2005年「ドライビング・ミス・デイジー」、13年「八月の鯨」、16年「二人だけの芝居」、17年「『仕事クラブ』の女優たち」など。朗読「黒い雨-八月六日広島にて、矢須子-」をライフワークとし各地で公演を行っている。1965年『証人の椅子』(山本薩夫監督)、70年『どですかでん』(黒澤明監督)、『地の群れ』(熊井啓監督)で毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。83~84年連続テレビ小説「おしん」(NHK)のナレーションを担当。近年の映画出演作は2014年『まほろ駅前狂騒曲』(大森立嗣監督)、17年『たたら侍』(錦織良成監督)など。今年は朗読劇「ラヴ・レターズ」、映画『高津川』(錦織良成監督)に出演している。

      スタッフ

      監督・脚本:中江 裕司

      1960年11月16日、京都府生まれ。琉球大学農学部卒業。80年に琉球大学入学と共に沖縄に移住。琉球大学映画研究会にて多くの映画を製作。92年、『パイナップル・ツアーズ』の第2話「春子とヒデヨシ」でプロデビュー。99年、『ナビィの恋』を監督。沖縄県内をはじめ全国的に大ヒット。2003年、『ホテル・ハイビスカス』が、全国公開され大ヒット。05年に那覇市に「桜坂劇場」をオープンし、運営会社のクランク代表取締役社長に就任。映画監督として活動しながら、桜坂劇場を経営している。

      好きな人と食べていると楽しいし美味しい。
      それが人間じゃないのか。

      食べることは生きることであり、生きることは死ぬことですからね。この映画を撮りながら、いつも考えていたのは〈好きな人と食う飯がいちばん美味い〉ということです。そこに究極の答えがあるのかもしれない。食べることは生きることだけど、一人で食ベていてもあまり楽しくない。でも、好きな人と食べていると楽しいし美味しい。それが人間じゃないのかって。だから、ツトムは真知子と一緒に食べたいんでしょうね。

      作品リスト

      映画

      • 『パイナップル・ツアーズ』(1992年)
        日本映画監督協会新人賞受賞/サンダンスフィルムフェスティバル IN TOKYOコンペティション部門審査員特別賞/第42回ベルリン国際映画祭ヤングフォーラム部門招待
      • 『パイパティローマ』(1994年)
      • 『ナビィの恋』(1999年)
        第50回ベルリン国際映画祭NETPAC賞/芸術選奨文部大臣新人賞/文化庁優秀映画
      • 『ホテル・ハイビスカス』(2003年)
        第15回東京国際映画祭審査員特別賞/第52回ベルリン国際映画祭、第26回香港国際映画祭に出品
      • 『白百合クラブ 東京へ行く』(2003年/ドキュメンタリー)
        第23回台北金馬映画祭招待
      • 『恋しくて』(2007年)
      • 『40歳問題』(2008年/ドキュメンタリー)
      • 『真夏の夜の夢』(2009年)
      • 『たしかなあしぶみ~なかむらはるじ』
        (2012年 成蹊学園100周年記念映画)
      • 『盆唄』(2019年/ドキュメンタリー)

      料理:土井 善晴

      料理研究家。「おいしいもの研究所」代表。
      1957年2月8日生まれ。大阪府出身。大学卒業後スイス、フランスでフランス料理、大阪で日本料理を学ぶ。料理学校勤務後、1992年に独立。日本の伝統生活文化を、家庭料理を通じて現代の暮らしに生かす術を提案。食育の講演会、出版、メディア、大学などで指導。
      レストランプロデュースなど活動は多岐にわたる。
      十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学研究センター客員研究員。
      公式レシピ・アプリ「土井善晴の和食アプリ」がある。著作に「一汁一菜でよいという提案」など多数。

      音楽:大友 良英

      音楽家。1959年、神奈川県横浜市生まれ。10代を福島市で過ごす。93年の中国映画『青い凧』(田壮壮監督)から始まり、映画音楽家として映像作品の音楽を100本以上も手掛けている。
      主な作品に、98年『あ、春』(相米慎二監督)、2001年『風花』(相米慎二監督)、02年『コンセント』(中原俊監督)、05年『カナリア』(塩田明彦監督)、13年の連続テレビ小説「あまちゃん」(NHK)、19年の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(NHK)、21年『花束みたいな恋をした』(土井裕泰監督)など。「あまちゃん」では東京ドラマアウォード2013の特別賞、第55回日本レコード大賞の作曲賞など数多くの賞を受賞。
      活動は多岐にわたり、東日本大震災を受けて立ち上げたプロジェクトFUKUSHIMA!の活動で、12年には芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門を受賞。19年には福島を代表する夏祭り「わらじまつり」改革のディレクターも務めている。

      豆知識

      二十四節気にじゅうしせっき

      旧暦を使っていた頃、季節の目安とされていた節目。一年を24に分け、それぞれの長さは約15日間。原案では月ごとの章で進むが、脚本にするときに中江監督がより季節の変化を感じる二十四節気に変更している。

      精進料理しょうじんりょうり

      仏道の修行にはいったものは、美食、肉食を避け、素食、菜食を心がける。
      ツトムは9歳で京都の禅寺に奉公に出される。13歳で脱走するまで、和尚から精進料理を習った。その時代に身につけたことを、68歳になった今も心がけ、一つひとつの野菜を丁寧に余すところなく料理する。ツトムの日々の食事は質素に見えるが、自然の恵みそのものを食す、とても豊かなものである。

      典座教訓てんぞきょうくん

      禅道の大本山、永平寺の開祖である道元和尚(どうげんおしょう)が著した心得書。
      典座とは禅道において食を司る重責を担う役職。その典座が行うべきことや心構えを細かくまとめたのが、典座教訓である。本作の中でもその一節が引用されている。

      西行法師さいぎょうほうし

      1118~1190年。鳥羽天皇に仕えた武士として知られるが、23歳で出家。優れた歌人として広く知られていて、百人一首の一句も詠んでいる。本作の中では有名な一句を引用している。
      「願わくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」
      「願うなら、2月15日(旧暦)の満月の頃、満開の桜の下で死にたい」という意味。お釈迦様の亡くなったのと同じ日、桜の満開の頃に死にたいと願った西行法師は、その一日後に亡くなった。

      いろは歌

      いろはにほへと ちりぬるを(色は匂へど 散りぬるを)
      わかよたれそ つねならむ(我が世誰ぞ 常ならむ)
      うゐのおくやま けふこえて(有為の奥山 今日越えて)
      あさきゆめみし ゑひもせす(浅き夢見じ 酔ひもせず)
      本作の中でツトムが歌う「いろは歌」は、仮名を重複せずに作られた47字の誦文(ずもん)。仮名を書く練習をするための手本として伝わったもの。七五調。通常、節はないが、ツトムは「京の通り名 数え歌」の節で口ずさむ。京都育ちのツトムならでは。

      犬のさんしょ

      ツトムの飼っている犬・さんしょ役は、白馬村の近隣のお宅の飼い犬・もも。雑種、メス。ちょっと太め。撮影前にスタッフが周辺で犬を探し回っていたところ、スタッフが運転する軽トラックの後ろを犬がついてきた。その出会いが、出演へとつながった。新井プロデューサーがしつけ担当となり、家までの送り迎えなど時間を共にしながら、撮影に挑んだ。沢田研二には初対面で頭をなでてもらい、すんなりとなついた。ツトムを待ちわびる姿など、名演をみせている。 名前は山椒好きのツトムの妻・八重子がつけた。